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1.走り始めたホームネットワーク

 ほんの少し前は家庭内の情報端末は電話だけでしたが、インターネットの普及とともに家庭内へも情報ネットワークが必要となってきました。
 家庭に入ってくる情報は電気通信による情報だけでなく、新聞や書籍のような印刷物もあれば隣近所との雑談も大きな情報源かもしれません。人々が生活して いく上では様々な手段で様々な情報が飛び交っているのが現実の姿ですが、意外にその実態を意 識していないのではないでしょうか。この現実を考えながら情報通信時代に何が有効か、今後の生活にどう影響しそうか考えることも必要ではないかと思いま す。
 情報通信に関連する統計情報や政府の方針などは情 報通信白書が大変参考になります。さらに子供向け白書ま で準備されているのには現在の政府の心意気が伝わってきそうです。ただ、白書はかなり大局的なところから書かれており、現実のわれわれの生活からするとま だはるか遠くに感じたり、本当にそんな世界が必要か疑問を感じたりすることも少なくありません。
 そこで、家庭内のネットワークをどう配線するか、今でも電気やオーディオ機器などの配線で蜘蛛の巣状態となっているのにこれからどうなっていくか予想 し、何が必要で、どう発展させるか考えてみました。

2.現状の課題
3.今後の技術動向
4.今後のホームネットワークへの要求
5.想定されるビジネスモデル
6.まとめ



2.現状の課題

2.1 家庭内の情報配線の現状


今の家庭内の状況を整理してみました。

(1) 電話線の例

 電話は距離を意識させない、音声を基本とする情報通信手段として長年利用されてきました。

(2) CATVの例

 電話も同軸ケーブルによるCATVや光ケーブルによるインターネット通信でも実現が可能となってきています。

(3) 情報通信の拡大

一般的な家庭でも複数台のパソコン利用や、プリンタやスキャナーなど様々な周辺機器を共用することも少なくありません。また、パソコンと電話機は異なった 場所に設置される事が多くそのための配線に様々な対応が必要となってきています。

(4) ホームコントロール

 家庭内の照明や電気器具を管理しエネルギー消費の削減、セキュリティーの管理を行うため家庭内のネットワーク化を行うようなシステムが提案されていま す。

(5) 遠隔監視

 電話回線などを通じて、リアルタイムに遠隔地の監視・操作できるシステムで現在、ガスの監視やホームセキュリティ業務、エレベーターの監視業務に多く使 われています。

2.2 アンケートによる現状と将来について

 現在の家庭内における情報通信に対する設備の状況と、今後の利用の動向、希望する器材やコンテンツなどをアンケートにより調査させていただきました。
 現在はまだまだホームネットワークといえるほどのものは多くありませんが、ネットワークを利用する機会は増加しており今後様々な期待が寄せられていると 見えました。

2.3 現状のネットワークサービスでの具体的問題事例

 現在の情報通信を利用する現状の中で発生している問題の具体例をいくつか取り上げてみました。今後のユビキタス社会の進展に対する課題として考えてみた いものです。

(1) ADSL工事配線

インターネットが高速かつ快適に、比較的経済的であることや、電話代の安いIP電話が利用可能ということもあり急速に普及してきました。

 しかし多くの機器を接続し、その機器には利用方法に応じて細かい設定をパソコンから行う必要があり、アンケートの回答にもうかがえる様に自分で出来ず、 販売店や知人に依頼し多くの苦労を伴っている場合も少なくありません。

(2) ADSL配線の通信トラブル事例

ADSL回線は従来の電話線で高速のデータ伝送を行うが、アンケートの回答にもあるように期待した性能が得られない場合も少なくない。基本的に外来雑音の 影響を受けやすく配線上多くのようなトラブル事例があります。

(3) IP端末機器の設定

 IP端末機器を接続しようとすると機器の設定で言葉が分からない、説明書が分からない、機器の設定が分からないという回答が多く、通信事業者や販売店へ 工事を依頼する場合が少なくないようです。

(4) 監視サービスにおける端末回線変更

 セキュリティー監視やガスメーターの遠隔監視システムは従来電話回線へ情報通信を行う通信端末を接続していますが、顧客が電話回線を使ってインターネッ トを利用すると端末の接続を変更するようになり、監視用通信端末の接続が外され機能できなくなることが発生しています。

(5) IP電話におけるアナログモデムの通信エラー

従来のアナログ電話回線で行っていた遠隔監視サービスをIP電話を利用した電話で行おうとした場合正常に通信が行えない事例が発生しています。



3.今後の技術動向

 現在新たな情報通信社会へ向けてアンケートでは高齢者社会の支援や健康管理、新たな娯楽提供などに関心を寄せているが、今後のディジタルデバイドは大き く拡大するのではないかと危惧されている。

 この現状を見つめながらその対応を図る技術について調査した。

3.1 e-Japan2004
 e-Japan2004では様々な先進的なアプリケーションの推進があげられ、生活に 関連した先導的取り組みとして高齢者が安心して生活できる環境を実現していくことを目標に具体的施策が示されています。

3.2 ネットワークの動向
インターネットへ接続する回線として急速にxDSL回線が延びてきたが,最近は光ファイバーの伸びが大きくなっています。CATVもIP電話の利用が可能 となり今後の動向が注目されています。

今後の新たな技術として無線LANのラスト・ワン・マイルへの利用も考えられています。

3.3 通信事業者の動向

 e-Japanで示されている安心して生活できる環境の一つとして健康管理サービスがあげられていますが、機器のコストやサービスの知名度から大きな普 及までには至っていないようです。

3.4 技術動向

 今後に家庭内で情報ネットワークの利用が拡大されると思えますが、そのために家庭内での配線の混乱、接続するための技術的困難の増大が想定されます。こ の問題に対応する可能性のある技術の今後の動向を調べてみます。

(1) イーサネットLAN

現在、様々なホスト機器を接続をするために用いられている基本的なケーブルはイーサネットケーブルではないでしょうか。このイーサネットを利用する技術に も新たなものが生まれています。

(A) PoE(パワーオーバーイーサネット)

(B) IPv6

(2) 無線LAN

配線に制約の多い一般家庭でも無線LANは効果的で、最近ではダイヤルアップルータとノートパソコンとの間を無線LANで結ぶ製品が広く出回っています。

(A) IEEE802.11によって定められた規格

IEEE802.11グループでは発足以降、無線LANによる電波利用・通信はもちろん、衝突検出やセキュリティ・QoSなど幅広い規格化を行っていま す。これまでに定められた規格とその概要は下記の通りとなっています。
規格名
概要
IEEE802.11
最初に登場した無線LANの規格。2.4GHz帯とFHSS方式を用いて2Mbpsの速度で通信を行う。

IEEE802.11a
5GHz帯を用いて54Mbpsの通信を行う。
IEEE802.11b
現在最も普及している規格。2.4GHz帯とDSSS方式を用いて11Mbpsの速度で通信を行う。
IEEE802.11c
有線/無線のブリッジを行うための規格。
IEEE802.11d
IEEE802.11で使用している2.4GHzや5GHzを利用できない国でも使用できるようにするた めの追加仕様。
IEEE802.11e
無線LANにおいてQoS機能をサポートする拡張MAC規格。
IEEE802.11f
異なるベンダーのアクセスポイント間での相互接続性の保証
IEEE802.11g
2.4GHz周波数帯を用いるためIEEE802.11bとの互換性互換性を保ちながら54Mbpsによ る通信を行え両方の規格を備えた製品も安価に実現できている。現在個人ユーザーに最も利用されている規格である。
IEEE802.11h
ヨーロッパにおいて5GHz帯による通信を行うための追加機能。
IEEE802.11i
MAC層のセキュリティ機能を強化するための規格。

(B) IEEE 802.15

 プリンターケーブルのようにコンピュータの周辺に設置される機器を接続するケーブルを無線化しようとして開発された規格で、いくつかの提案がなされてい ます。

@ ブルートゥース

無線LANや赤外線通信と比べて消費電力が小さいことから、登場した当初は携帯機器やコンピュータ関連機器との間をワイヤレスで接続する技術として期待さ れています。

A UWB

UWBの利点は低消費電力、耐フェージング特性、高速通信、高精度位置検出において有利な特徴を持っています。

B ZigBee

家電向けの短距離無線通信規格の一つで省電力で低コストという利点があります。


Bluetooth
UWB
ZigBee
無線規格
IEEE 802.15.1
IEEE 802.15.3a
IEEE 802.15.4
通信速度
1Mbps
480Mbps
250kbps
周波数帯域
2.4GHz
3.1〜10.6GHz
2.4GHz
通信距離
10〜100m(ver.2)
4〜10m
10〜70m
消費電力
120mW
100mW以下
60mW以下

図 13 IEEE802.15の関連企画

(C) IEEE802.16

 地方の人口密度の低いところでブロードバンドを拡充していくにはケーブルの敷設による方法では大きなコストが必要となり実現が困難で、この対策として無 線による広域、高速のネットワークの提供として検討されています。

(D) IEEE802.20

高速で移動しながら1Mbps以上の通信できるような無線通信規格として検討されています。

(E) アドホック

 無線LAN端末のような、端末を中継にも利用することで広範囲なネットワークを形成しようとするものです。

(3) 電力線通信

  電力線通信は電灯線通信とも呼ばれ、既存の家庭内の電力配線をデーター通信に利用しようとするものです。
  e−Japanの中でも、積極的な利用の推進がうたわれています。しかし、現実には電波干渉の問題や家庭電気器具とのミスマッチなどで十分な性能が得 られないなど課題も少なくないようです。

(4) 特定小電力無線通信

テレメータ用、テレコントロール用、データ伝送用には400MHz帯と1200MHz帯の周波数が割り当てられています。400MHz帯を利用するもので 一般的な通信距離は100m程度です。
微弱無線通信では到達距離に問題がある場合や、家の内外で相互に通信する場合などに利用されます。
電波法の規格から、無線LANのように大量のデータを高速で通信するには不向きですが、決められた相手に独自の通信手順で通信する場合や、低消費電力の通 信方法を確立することが可能で電池を使った通信に利用されています。

(5) 微弱無線通信

 特に免許が必要でなく、誰もが自由に利用できる通信なので自動車のリモコンドアロックのように大変多く使われています。実用的な電波の到達距離は10m 以下で、見える範囲程度の通信に使われています。室内で使う電気製品や、自動車のリモコンなど幅広い用途で使われています。
 電波の強度が弱いから装置が簡単だとは言えず、安定した通信を確保しようとすると比較的高度な技術が必要です。
 
(6) 赤外線通信

 赤外線を使った通信は様々な形で利用されています。最も多い利用分野は家電機器などで使われているリモコンに利用されています。

(A) 赤外線リモコン

低コストで電波法などの規制もなく手軽に利用できることから赤外線リモコンは多くの機器に採用されています。非常に多くの分野で利用されていますが、それ らが混乱なく、正確に動作するようにするために統一された規格で整理されています。

(B) IrDA

Windows 搭載のノート型パソコンやハンドヘルドコンピューターの採用されています。IrDA

(7) ECHONET

 家庭内の家電ネットワークを検討してきた大手電機メーカーなどが設立したエコーネットコンソーシアムが提唱している、家庭内の家電製品、住宅設備機器な どの制御を目的とした規格です。

(8) iReady

ネットワーク接続部分を家電機器本体から分離し、ネットワークアダプタ(図2-9)として別売りできるようにしたものです。

(9) DLNA(デジタル・リビング・ネットワーク・アライアンス)

 PC・家電・モバイルデバイスなどの間で相互接続性を確保し、デジタルコンテンツの共有実現を目指しているネットワークです。

(10)UPnP

家庭内の電化製品とコンピュータを接続するための技術仕様「Universal Plug&Play」。



4.今後のホームネットワークへの要求

 ホームネットワークとして基本的な要求項目を整理してみます。

4.1 外のネットワークに煩わされない

ユーザーがプロバイダーやサービスメニューを変更してもそれまでの住宅内のネットワークを変更しないでサービスの継続と新たな機能の追加ができることが望 まれます。

4.2 新たなシステムを容易に導入できる

 従来の家庭電気器具のように販売店から購入した後、家庭の電源コンセントに差し込むだけで利用を開始でき、機器を取り替えてもそのまま目的の機能が継続 できるものが望まれています。

4.3 誰もが使える機器の単純化、共通化

 昔からの黒電話はだれでも説明書なんて見ないで使えました。

4.4 安心して使える

 家庭内で安心して簡単に利用できる機器のセキュリティ確保は重要です。




5.想定されるビジネスモデル

 こんなビジネスがあれば便利ではないかと言うことで、実現の困難さは別にして利用者から勝手な希望を並べてみました。

5.1 ハードウェアー

 ユーザーの希望を確認し、機器のもつ機能を効果的に利用する接続を支援することが求められるていくでしょう。

5.2 アプリケーション

 端末は出来る限り単純化を行い、必要なアプリケーションはネットワーク側から提供することで、ユーザーのシステムの安定性、単純な操作性、多彩なコンテ ンツの利用をはかるようなシステム作りが出来るのではないでしょうか。



6.まとめ

 家庭内の安全、安心をサポートを健康管理や高齢者支援はアンケートからも期待されているが、なかなか一般的な利用状況には至っていないのが現実です。

一方、オーディオ、ビジュアルの世界はデジタルの世界へどんどんと進展し、多くのプロバイダーが様々なコンテンツの競争を行うようになっています。

 これから、何が利用されていくでしょうか。


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